12月1日からサッポロファクトリーで「山本二三展」が開催されています。
山本二三さんは、ジブリ映画などの背景美術を担当している方です。
今回の展示では、「天空の城ラピュタ」や「もののけ姫」、「時をかける少女」など、有名な映画の背景の原画を見ることができます。
早速行ってきたので、今日は私が感じた原画展の魅力と感想をご紹介します。
山本二三展について
会場はサッポロファクトリー3条館2階。
期間は、2018年12月1日(土)から2019年2月11日(月祝)まで。
開館時間は10時から19時まで。
観覧料がかかります。
最終入場は終了30分前なので、お仕事帰りに行く人は、時間にご注意ください。
詳しくは、こちらのサッポロファクトリー・イベントページをご覧ください。
会場は2つに分かれています
会場は通路を挟んで第1会場と第2会場に分かれていました。
第1会場入り口で受付をして入ります。
第1会場では、未来少年コナンやルパン三世、じゃりン子チエ、天空の城ラピュタ、火垂るの墓など。
第2会場では、もののけ姫や時をかける少女など。
それぞれ原画やイメージボードを見ることができます。
ジブリ映画やアニメ作品以外にも、ゲームの背景や教科書の挿絵、地域のポスターの原画がたくさん展示されていました。
展示会場内は割と広々した印象。
今回は平日のお昼頃に行ったせいか、空いていてとても見やすかったです。
じっくり見たい人は
時間に余裕を持って行くことをオススメします。
私はじっくりじっくり見過ぎて、第1会場だけで30分近くかかりました。
休憩を挟みつつ、結局すべて見終わるまでトータル1時間半くらいかかってしまいました。
山本二三展来てて、会場が2つに分かれてて今第1会場まで終わった。
— ちづる🐰ぬりえライフ (@chizurumaro) December 5, 2018
色々吸収したいことがありすぎて、熱心に見ていてもう頭に入りきらないので一旦休憩してる……。
飴舐めて水分取ったら第2会場行ってきます! https://t.co/lNwEX8GrCx
また、じっくり見たい人は、同じ趣味の人と行くか、1人で行った方がいいかもしれません。
今回1人で行ったんですが、もし夫と一緒に行っていたら、夫を長時間待たせてしまっただろうなと思います。
画材の質感を間近で見ることができるのは原画展だけ!
今回原画を間近で見て1番良かったのは、画材の質感を感じられたことでした。
山本二三さんは、主にポスターカラーを使用しているそうです。
その画材独特の質感にハッとさせられることが度々ありました。
原画だと、絵の具の1つ1つの重なりやその凹凸、グラデーションのなめらかな質感までよくわかります。
絵の構図としての立体感だけではなく、重ねられた画材の立体感を見ることができるのです。
しかし、印刷された状態で見ると、それがわからなくなってしまいます。
会場内には、山本二三展図録本の見本が各会場に1冊ずつ置いてあります。
買ってきちゃいました。
展示を見ている途中で何度か図録を見てみたところ、同じ絵でも、今自分が肉眼で見た原画と、図録に印刷された絵とでは印象が大きく違うことに気づきました。
原画の画材ならではの質感や凹凸が、図録だとすべてキレイな1枚絵として印刷されてしまうのです。
もちろん絵自体がとても素晴らしいのは言うまでもありません。
しかし、原画のアナログ画材の質感そのものまでは、印刷では見えなくなってしまいます。
私が今回の展示を通して強く感じた、画材そのものの質感というアナログならではの良さ。
それが、印刷になると印象が大きく変わってしまう。
原画を見れることってとても贅沢なことなんだ!
そう感じました。
自然の風景や建物の細かさ・質感の表現がとにかくすごい
山本二三さんは背景美術を担当されているので、森や草木、川、海などの自然風景、街並みや建物、その内装などの原画が多いです。
私が今回1番参考になったのは建物でした。
昨年「マジカル・タワー」を塗って、建物を塗る楽しさを知りました。
今回の展示では、
・壁の装飾の立体感を出すために、どういうところに影をつけているのか。
・光が当たらない暗いところはどんな色を使っているのか。
・レンガや木目の質感はどんな風に表現されているのか。
などなど、これまで塗り絵をしてきて「どうしたらいいのかな?」と自分が悩んだポイントを重点的にじっくりと観察することができました。
特に、暗いところは何色を使っているのか注目してみましたが、今の自分にはハイレベル過ぎました。
彩度や明度を落とした色を使っているのはわかる。
でも、「暗いところを塗ってください」と言われたら、何色を使えばいいのかわからない。
今の自分にとっては、暗く塗ること自体なかなか勇気を要することなので、まだまだ難しそうだなと感じました。
そして、今回の展示の見どころは何と言っても質感の表現。
岩や石といった質感の表し方。
木目の多彩な表現。
レンガ造りの内装のイラストでは、レンガ1つずつ微妙に色に変化をつけていたり。
細かいところまでとにかく丁寧に描き込まれていて、質感の表現力がすごいです。
図録の「名探偵ホームズ」の解説によると、
古いロンドンを再現するために、山本はブリティッシュ・カウンシルからたくさんの資料を借用し、それらを参考にして煙突や出窓のある建物、レンガや敷石一枚一枚の色調や質感までも描きとっています。
とのこと。
入念な下調べや観察力に基づいたものだったんですね。
今まで私は想像で塗ることが多く、質感の表現なんてとてもできなかったんですが、表現の幅を広げたかったら、もう少し観察力を鍛えなければいけないなと感じました。
印象に残った作品
私が良いなと思った作品と、そのポイントをざっくりご紹介します。
これから行かれる方は、良かったら探して見てみてください。^^
第1会場
「ニモの部屋」
会場入ってすぐのところにある、子ども部屋のイラストです。
家具の木目や壁にかけられた額縁の凹凸など、細部まで細かく描き込まれています。
「じゃりン子チエ」
解説によると、この作品では、
はるき悦巳の画風を活かして、従来のポスターカラーから水彩画の美術に挑戦しました。
約800カットすべてに水彩画用の紙を使用、水貼りしてペン入れをほどこすという手間のかかる手法を用いて大阪の空気を表現しました。
とのこと。
なるほど言われて見ると、他の作品とは画材の質感が違います。
画材の違いを、ぜひ会場で見比べてみてください。
「かちかち山」
未公開のアニメーション映画だそうです。
「仇討ちのおじいさん」というタイトルのイメージボード、おじいさんの迫力がすごいのでぜひ見てください。
かちかち山ってこんな鬼気せまるようなお話だったっけ!?と思わず二度見しました。
「ファンタジックチルドレン」の「霧と教会」
霧のある風景ってこんな風に表現するんだ……と見入ってしまった作品です。
一体どうしたらこんな表現ができるのかは、私に知識がなさすぎて全くわかりませんでした。笑
少し怪しい雰囲気がとても素敵なので、ぜひ見てみてください。
「川の光」の「季節は巡り」
横長の作品です。
冬から春、夏へと川辺で季節が移り変わる様子が表現されていて、見た瞬間思わずグッときて泣きそうになりました。
第2会場
「時をかける少女」
夕暮れシーンのイラストが2つ展示されています。
空の色が移り変わるグラデーションが、とにかくなめらかで美しかったです。
どうしたらこんなになめらかなグラデーションになるんだろう……!?
現代が舞台の作品で、街並みや建物、内装なども細部までとても細かく作り込まれています。
原画展で初めて「この背景アナログだったのか……!」と知り、衝撃を受けました。
「もののけ姫」
とにかく苔がヤバイ。
よく見ると、ただ緑で塗るだけじゃなくて、もこもこした質感を出すために細かく凹凸を表現するための影がちょっとずつ入っています。
映画で見たときは「苔だな~」としか思っていなかったんですが、よく考えると、苔だとすぐに認識できる表現力ってすごいなと気づきました。
もののけ姫は映画で見る風景がとても素敵ですよね。
原画を見ると、さらにそのすごさを感じることができるので、ぜひじっくりじっくり見てみてください。
「世界樹の迷宮Ⅳ 伝承の巨神」
山本二三さん、ゲームソフトの背景美術も担当されています。
この背景、ヨーロッパ風の街並みや色使いの明るさがとても素敵で、コロリアージュが好きな方は、この「世界樹の迷宮」のイラスト好きそうだな~!と思いました。
以上、私の印象に残った作品をご紹介しました。
会場内は撮影禁止なので文字だけの説明になってしまいましたが、これから山本二三展に行かれる方はぜひご自身の目で見てみてくださいね。
グッズも充実
第2会場の出口近くではグッズが販売されています。
ポストカードや複製画、関連書籍、なんとマスキングテープまで!
ちなみに私は、「どうやって塗っているんだろう」と思いながら原画を見た後だったので、グッズコーナーで図録本と一緒にこちらの本を買ってしまいました。
4,104円とちょっとお高いんですが、山本二三さんの技法や手順を具体的に見ることができます。
すぐ影響されるので(笑)、私もポスターカラーを使ってみたくなりました。
原画を見られる贅沢を味わおう!
塗り絵をする人、絵を描く人、絵を見るのが好きな人、ジブリが好きな人。
みなさん、ぜひ山本二三展へ行きましょう!
観覧料はかかりますが、それだけの価値はあると思います。
画材は色鉛筆ではないし、私はポスターカラーを使ったこともありませんが、それでも様々な表現方法はどれも勉強になることばかりでした。
普段自分が塗っていて「どうしたらいいんだろう?」と疑問に思っていることに対して、参考になることがとても多く、刺激にもなったので、行って良かったです。
塗り絵をしたり、絵を描く人にとっては、何か新しい発見があったり、今後の自分の作品に生かせそうなことがあったり、学べることがきっとあるはず。
印刷ではわからない、アナログ画材の質感、原画の良さを、ぜひご自身の肉眼でじっくり堪能してください。
終わりに
何年も前に、同じくジブリの背景を担当する男鹿和雄さんの展示に行ったことがあります。
当時はまだ塗り絵をしていなかったので、「細かくてすごいな」「どうしたらこんな風に描けるんだろう」という感想で終わりました。
そして塗り絵をしている現在、今回のような原画展を見ると、勉強になることばかりでした。
自分がその原画に対してどういうところを見たいと思っているのか。
それがはっきりしていたので、何も知らなかった昔よりも、少しだけ踏み込んだ見方ができるようになったなと感じました。
ただし、どこを見ても学ぶところだらけなので、完全に頭がキャパオーバーしてしまいました。笑
圧倒的な技術力と迫力。
「プロってすごいんだな……!」と改めて知りました。
今回原画の良さがよくわかったので、今後またこのような機会があればどんどん行きたいと思います。
山本二三展は、できたら期間中もう1回行きたい!
さて、感想レポートめちゃめちゃ長くなってしまいました。
興味がある方、これから行かれる方は、ぜひご自身の目で、原画展ならではの良さを味わってきてくださいね。
ではまた次回~。